- TanQ
"自分で考えなさいよ!それが探究でしょ!" 探究型学習の開智望小学校に行ってみた。

■ 「自分で考えなさいよ!それが探究でしょ!」
本当びっくりしました。
なぜって、これはチームでワークをやっていたときにでた、2年生の女の子の発言だからです。
この言葉ひとつで、「なぜ探究学習をやっているのか。」が幼い頭に浸透し、一つの価値観をしっかり構築していることがわかりますよね。
なぜそんなことが可能なのか、それは、学校を中心とするコミュニティーの方々が、深いところで理念を共有しているから と感じました。
いったいどのような理念で運営されているのか。具体的に僕が目で見たことを交えながら、記したいと思います。
■ 算数を学ぶのではなく算数で学ぶ!?
僕達はまず、「算数」の授業を見学させて頂きました。
単元は、"面積"。
みなさんはどのようにこの単元を学びましたか?
僕が小学校の時は、小さなタイルのような四角形を使って学びました。
たてと横の数を数えて、
「掛け算すると、合計の個数がすぐわかりますよね!」
という、事実を確認するようなプロセスで学びました。
では、開智望小学校はどのように学んでいるのでしょうか。
教室に入ると、生徒たちはハサミでなにやら四角形をチョキチョキ切っていました。どうやら、グループでのワークのようです。

「みんなが、長さが同じだったら面積が同じなんじゃないかって仮説を立てました。」
「だから、周囲の同じ長さの四角形をいくつか用意して、切って比べてもらいました。何か気づいたことがある班はありますか?」
各班から、多様な気づきが共有されます。どこかの班から、
「重ねてみて、はみ出したところを切ってさらにはみ出したところ、ぴったりになった」
すると、先生は次の問いを発しました。
「なるほど!今は上手く重なったかもしれない。でも、重ならなかったらどうやって比べるの?」
するとこどもたちは、頭を捻りだします。しばらくすると、
「ヒントとなるプリントを用意しています!」
と、プリントを渡して、算数の授業を終えました。
そう、ついに「面積」について、答えを出さずに終わったのです!!

(ヒントが配られた瞬間に箱の数を数えだす子どもたち)
結局、面積についての言及がなされないまま終わりました。算数の "面積" の単元の習得を目的とするならば、僕の受けた方法の方が効率的で良いはずです。
さて、子どもたちは一体何を学んでいるのでしょうか??
■ 探究って何を学んでいるの?
次に、探究の授業を見せてもらいました。

教室に入ると、前に設置されているタイマーを気にしながら、何やら生徒たちが大慌ての様子でグループで話し合ったり、まとめ作業をしたりしていました。真剣そのもの。
「次なにしよう?」
「自分で考えなさいよ!それが探究でしょ!」
まるでドラマで見る、締切に追われる週刊誌の編集部のようでした。


彼らは一体何をしているのでしょうか??
それは、自分たちが所属する 開智望小学校という"コミュニティー" についての発表準備でした。


2ヶ月かけ、様々な角度から体験や知識のインプット、アウトプットを繰り返していきます。それらの全ての授業計画の中心には、一つの考え方が据えられています。
「コミュニティは、価値観を共有する」
先生たちの授業計画は、生徒たちにこの「考え方」が感じられるようにし、身の回りのことから実感や体験を伴うような流れで組み立てられています。
そして生徒たちには、それが「視点」のように作用します。自分たちの所属するコミュニティについて調べるときも、「共通の価値観ってあるのかな?」「そもそも価値観って何なんだろう?」そんな、自分たちから湧いてきた疑問に応えるように探究がすすんでいきます。
そのような視点を得ると、なんとなく通っていたサッカースクールに対して、
「他のスクールの価値観とはどのように違うのか?」
という疑問が湧いて出たり、サッカーの先生に向けて、
「どんな価値観で運営しているんですか?」
とインタビューしたくなるかもしれません。

(探究とは何か、ということを班でまとめているシートを、クラスに掲示して共有しています)
でも、結局何を学んでいるのでしょうか。そして、それは何のために学んでいるのでしょうか?
■ 正解のない時代に何を学ぶべきか?

(今回僕達を案内してくださったM先生。時間をたっぷり割いて丁寧に探究型学習について教えてくれました)
これらの学びは一体どのように評価されているのでしょうか。先生は、3つのポイントを挙げました。
1. アウトプット
2. コンセプト
3. スキル
アウトプットやスキルはわかりやすい評価軸ですが、コンセプトというのは一体何のことなのでしょうか?
それは、体験したことや仮説・検証したことから、帰納的に浮かび上がってきたもの。例えば、「コミュニティとはどういうものですか?」という質問に対し、自分の体験、思考を通して抽象化したものです。つまり、「自分の考え」や「価値観」が形成されているか?ということが評価軸になっている、ということです。
インターネットや自ら学習するAIが登場し、正解のある問題は高速で処理されていきます。1人ひとりが答えのない問題に立ち向かっていかなければいけません。「自分で考えること」がこれほどに重要視されてきた時代はないと言っていいでしょう。
模範解答のコピーのみを訓練・評価されてきた子どもたちに、
「自分で考えなさい!」
と突然突き放すような態度ではなく、「自分で考え、生み出していくような学び方」を社会全体で構築していく必要があります。
開智望学園を見学し、1番に感じたことは、「こども自ら考える学び方」を教員の方だけでなく、生徒も、保護者の方々も共に繋がり、生み出していっているという姿勢であり、"あり方"でした。

(生徒たち自身が探究型学習を進めていくための工夫を共有していました。TOYOTAの"KAIZEN" を思わせます。)
このような学び方を、政府も推奨しています。2018年までに、探究型で学ぶ国際バカロレア認定校を200校(DP:16歳~19歳を対象としたプログラム)へ増やす という目標を掲げています。(現在国内31校)
それに伴って、国際バカロレアの成績を推薦入試などの評価に採用する、大学が増えていく予定です。
しかし、その奥にある目的、「考える力を育む学び方」を社会全体で考えていく、ということを忘れてはいけません。
そうでなければ、ある学び方だけが正しく、ある学び方は間違っているという思考停止状態に陥ってしまうでしょう。
教育関係の方、保護者の方だけでなく、子供やご年配の方も、社会全体が繋がり合い、知恵を交換し、「考える力を育む学び方」を学び続ける必要があります。

(下は0歳から、立場の異なる人達で集まって見学に行きました。)
今回、開智望小学校の先生がご招待してくださったことで得られた学びは、個人にとっても、一緒に行った皆さんにとっても非常に大きなものでした。
公教育、民間教育に関わらず、様々の教育のあり方を見て、社会全体で学ぶきっかけを作っていきたいと考えています。
このような取り組みがあるよ!と思い立った方は、ぜひお声がけください。たくさんの学び方を学びにいきましょう。
(開智望小学校について知りたい方はこちら)
(国際バカロレアの初等教育プログラム PYPについて詳しく知りたい方はこちら)
(PYPについて動画で概要を知りたい方はこちら)
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(メールでのご連絡は info@tanq.co.jp までご連絡ください。)